遅発性ジスキネジアとはどのような病気ですか?
遅発性ジスキネジアとは?
「ジスキネジア」とは、自分の意思とは無関係に、体のどこかが勝手に動いてしまう、不随意運動
*という体の動きの問題の一つです 1)。
ジスキネジアのうち、抗精神病薬などのお薬を長い間使用したことで起こるものを「遅発性ジスキネジア」と呼びます。遅発性ジスキネジアによる体の動きの問題にはさまざまなものがありますが、「繰り返し唇をすぼめる」「舌を不規則に動かす」「口をモグモグさせる」「眉をひそめる」など、顔に特徴的な症状が出ることがよくあります 1)。
遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬などを使ったからといって必ず起こるものではありませんが、症状がみられた時に早めに気づき、対応するためにも、患者さんやご家族に正しく知っておいていただくことが大切です。
*参考:不随意運動とは
- 「⾃分の意思とは無関係に起こる動き」のこと。
- やめようとしてもやめられない、あるいは、やめてもすぐにまた起こる体の動きで 1、2)、さまざまな種類がある(下表)。
不随意運動の例 1-4)
種類 | 症状の特徴 |
---|---|
ジスキネジア (遅発性ジスキネジアなど) |
※詳しくは、「どのような症状がみられますか?」を参照 |
振戦 |
規則的な、震えのような動き。 |
ジストニア |
手足や胴体をねじるような不自然な動き。 |
ミオクローヌス |
陽性と陰性がある。 陽性:素早いピクッとする動きで、いつ、どのからだの部位に出るかも不規則な動き。筋肉の収縮によって起こる。 陰性:筋肉の収縮が突然止まる。 |
どのくらいの人に起こりますか?
どのくらいの人に遅発性ジスキネジアがみられるか(有病率)については、さまざまな報告があります。
海外の研究では、全世界の平均として「抗精神病薬を使用している人の約4人に1人(25.3%)に遅発性ジスキネジアがみられる」という報告があります 5)。日本人では、統合失調症で治療を受けている人の6.5%に遅発性ジスキネジアがみられると報告されています 6)。
ただし、遅発性ジスキネジアの起こりやすさは、使用するお薬の種類や患者さんの年齢などにより差があり、例えば、高齢の方のほうが遅発性ジスキネジアが起こりやすいことが報告されています 5)。
抗精神病薬を使用している人の
約4人に / 1人 5)
【参考資料】
- 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル(ジスキネジア)平成21年5月(令和4年2月改訂)
- 尾崎紀夫, 他 編. 標準精神医学 第7版. p155, 医学書院, 2018.
- 渡辺昌祐, 他 編著. 遅発性ジスキネジアの臨床. p44-54, 新興医学出版社, 1991.
- 梶龍兒. 臨床神経生理学. 2015; 43(4): 122-141.
- Carbon M, et al. J Clin Psychiatry. 2017; 78(3): e264-e278.
利益相反:著者には、ヤンセンファーマ株式会社の顧問又はアドバイザーを務める者、及び同社から講演料又は顧問料を受けた者が含まれる。 - Xiang YT, et al. Int J Clin Pharmacol Ther. 2011; 49(6): 382-387.