遅発性ジスキネジアはどのような症状がみられますか?
遅発性ジスキネジアの主な症状
顔や手足、全身に起こる症状 1、2)
遅発性ジスキネジアの患者さんのほとんどは、はじめに頭部や顔面(唇、舌、頬、下あご、顔の筋肉など)に症状があらわれます。舌を左右に動かしたりねじったりする、繰り返し唇をすぼめたり、口を突き出したりする、口をモグモグさせる、などの症状はよくみられます。また、顔をしかめたり、まばたきを繰り返すなどの顔の症状が出ることもあります。
このほか、手や足、全身にも症状が起こることがあり、手に力が入ってゆるめることができない、手でドアノブを回すような動きを繰り返す、勝手に手や足が動く、足が突っ張って歩きにくい、などの症状がみられることがあります。
最も多くみられるのは顔の症状であり、若い人ほど手足や全身に症状が広がりやすい傾向があります。
口に起こる症状については、患者さん自身が症状に気づかないことや、気になっても日常生活にあまり影響がなければ「たいしたことはない」と見過ごしてしまうことも少なくありません。抗精神病薬を使用している患者さんや患者さんの身近にいらっしゃる方々には、注意深く様子を見ていただくことが大切でしょう。
遅発性ジスキネジアの部位別症状 2)
部位 | 症状の特徴 |
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頭部・顔面 |
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手足 |
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首・体幹 |
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遅発性ジスキネジアの中で、とくに注意が必要なもの 2、3)
遅発性ジスキネジアには「呼吸性ジスキネジア」と「食道ジスキネジア」というタイプもあり、以下のような特徴があります。どちらも見た目からはわかりにくく、発見されにくいため注意が必要です。
種類 | 特徴 |
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呼吸性ジスキネジア |
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食道ジスキネジア |
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遅発性ジスキネジアと間違いやすい症状 2)
遅発性ジスキネジアと間違いやすいものに、「遅発性ジストニア」と「Rabbit(ラビット)症候群」があり、以下のような特徴があります。
種類 | 特徴 |
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遅発性ジストニア |
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Rabbit(ラビット) 症候群 |
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遅発性ジスキネジアかどうか、紛らわしい動きもあります
抗精神病薬の使用によらず、精神疾患そのものの症状として、遅発性ジスキネジアと似た症状がみられることがあります 2)。また、下の表のように、とくに病気のない高齢の方でも、入れ歯のために⼝をモグモグと動かしたり、⼝が乾くために⾆なめずりをしたりするなどの動きがみられることがあります 1、2)。これらの動きは遅発性ジスキネジアによるものではありませんが、遅発性ジスキネジアによる動きとよく似ている場合もあり、簡単に見分けることはできません。そのため、ここに挙げたような遅発性ジスキネジアに似た動きがみられるときは、患者さんご自身やご家族のみで判断せず、早めに担当の先生に相談してください。
遅発性ジスキネジアと紛らわしい動き 1、2)
主な動き |
など |
押さえておきたい ポイント |
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【参考資料】
- 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル(ジスキネジア)平成21年5月(令和4年2月改訂)
- 渡辺昌祐, 他 編著. 遅発性ジスキネジアの臨床. p55-59, p67-75, 新興医学出版社, 1991.
- 堀口淳. 精神医学. 2021; 63(2): 247-259.
利益相反:著者は、田辺三菱製薬株式会社より顧問料及び講演料を受けている。